IRCとERCは、特に外国投資資本を持つ企業にとって、ベトナムでのビジネスにおいて一般的な用語です。本記事では、これら2つの証明書の概念、重要性、および違いについて詳しく解説します。
1. IRCとERCとは?
IRC(投資登録証明書/Investment Registration Certificate)
ERC(企業登録証明書/Enterprise Registration Certificate)
これらは、外国投資を受けた企業がベトナムで事業を行うために必要な2種類の証明書です。IRCは投資プロジェクトが承認されたことを示す証明書であり、ERCは企業の法人資格と事業活動の正当性を証明するものです。
1.1 IRC(投資登録証明書)
IRC(Investment Registration Certificate)は、2020年ベトナム投資法に基づき、投資家が登録した投資プロジェクトの情報を記載した証明書です。計画投資省傘下の外国経済部門により発行され、IRCを取得することで、企業は法的要件を満たし、ベトナム国内での投資活動が正式に認められます(直接投資・外国投資・その他関連活動を含む)。
1.2 ERC(企業登録証明書)
ERC(Enterprise Registration Certificate)は、2020年企業法に基づいて事業登録の情報を記録し、計画投資省傘下の事業登録部門によって発行されます。ERCを取得することで、企業は法的資格を得て、正式に市場でのビジネス活動を開始できます。
2. IRCとERCの意義
IRCとERCは、外国投資企業のベトナムにおける活動において非常に重要な役割を果たします。
2.1 IRCの意義
- 投資プロジェクトの承認:政府当局により承認されたプロジェクトであることを証明。
- 投資家の権利・義務の明確化:関連する条件や制限を含めた権利義務が記載。
- 法的根拠の提供:以下のような活動の法的根拠になります:
- 資産購入
- 人材雇用
- 銀行口座の開設
- 生産・経済活動の実施
2.2 ERCの意義
- 法人資格の証明:企業の法人格を認め、正式なビジネス活動が可能に。
- 法的根拠の提供:契約締結や取引活動の法的基盤となる。
- 企業の権利・義務の明確化:国家・社会に対する責任を明記。

3. IRCとERCの内容
3.1 IRCの内容(2020年投資法 第40条より)
- 投資プロジェクト名
- 投資家の情報
- プロジェクトコード
- プロジェクト用地の住所・面積
- プロジェクトの目的・規模
- 投資総額(自己資本+調達資本)
- 事業の実施期間
- プロジェクトの進行計画(資本投入や段階ごとの目標)
- 優遇措置や支援内容(該当する場合)
- 実施にあたり投資家が満たすべき条件(該当する場合)
3.2 ERCの内容(2020年企業法 第28条より)
- 企業名・企業コード
- 本社所在地
- 法定代表者の情報(氏名、住所、国籍、身分証明番号)
- 出資者・構成員の情報(個人・法人)
- 資本金または投資資本の額
4. IRCとERCの違い
外国投資企業にとって、この2種類の証明書を区別することは極めて重要です。
比較項目 | IRC(投資登録証明書) | ERC(企業登録証明書) |
発行目的 | 投資プロジェクトの承認 | 企業の設立・運営の承認 |
発行機関 | 外国経済担当部門(計画投資省) | 事業登録部門(計画投資省) |
必要性 | 外国投資分野で政府の承認が必要な場合 | 全企業に必須(投資分野問わず) |
法的役割 | 投資活動の法的基盤 | 事業活動・契約の法的基盤 |
まとめ
- ERCは、企業が合法的に設立・運営し、税務申告を行うために必要な基本証明書。
- IRCは、特定分野において政府の承認が必要な投資プロジェクトに対して発行される。