ベトナムでは2021年1月1日より新企業法が施行され、具体的にどのような点が変更になったのか、今回ご紹介させていただきます。
1. 有限責任会社に関する主な変更点
日本人投資家の出資するベトナムでの会社設立登録のうち、もっとも一般的な会社形態が有限責任会社となっています。改正前の企業法上、会社所有者が企業等の組織である1名有限責任会社は監査役、出資者が11名以上の2名以上有限責任会社は監査役会を設置しなければならないとされているところ、新企業法では、1名有限責任会社・2名以上有限責任会社のいずれについても、国有企業又は国有企業の子会社である場合を除き、監査役・監査役会の設置は任意とされます。
また、旧企業法上、有限責任会社の法定代表者の役職に関する明確な規定が存在しなかったところ、新企業法においては、法定代表者のうち少なくとも1名は会長、社員総会会長又は社長のいずれかに就任しなければなりません。
2. 社印登録義務の廃止
旧企業法(No.68/2014/QH13)にて、企業は、社印の使用前に国家企業登記ポータル上で公開するために、社印の印影を経営登記機関に通知しなければならない旨が定められていますが、新企業法では当該義務が廃止されます。但し、実務上の注意点として、社印の印影が企業登記ポータル上で公開されなくなり、取引先等の第三者が社印の真実性について当該ポータルで確認することができなくなる点が挙げられます。
背景としては旧企業法のもとでは 社印を重視していたがためにしばしば署名者の署名権限などその他の重要な事項の確認がおろそかにな り、なりすましなどの詐欺が発生したという点があります。新企業法のもとでは、契約相手や署名者の署名権限 の確認がより一層重要になると考えられます。また、新企業法においてはデジタル署名が使用できることが明記されました。
なお、従前の社印は物理的な印鑑とされていましたが、改正後は電子印による方法も可能となり、ベトナムにおいても電子契約等のデジタル化が普及していくものと見込まれます。
3. 企業登録手続の電子化
改正前の企業法上、会社の新規設立のための企業登録手続は基本的に物理的な紙媒体で行う必要があったところ、新企業法においては、企業登録手続がオンラインで行えることとなります。
流れとしては、旧企業法において、新規に会社を設立する手順としては①国家企業情 報ポータルにてオンライン申請→②当局の承認→③申請書類原本 を当局に提出→④当局から企業登録証明書(ERC)を取得という流れでありましたが、新企業法においてはステッ プ③の申請書類原本の当局への提出が不要になり、企業設立申請書類のスキャンファイルを電子媒体で 提出し、ハードコビーを社内で保管する形に変更となり、手続きが簡略化されました。
以上、企業法改正について3点をご説明いたしましたが、社内の組織構成に関する変更点もございますので、来週月曜日のブログに続きご説明させていただきます。是非ご覧くださいませ。